和名 シロテンマ 白天麻 
別名 ヒメテンマ 姫天麻
ここでの「テンマ」はオニノヤガラの別名。
学名 Gastrodia elata var. pallens Kitag. 種小名 pallens は「淡い色の」という意味。
品種 f. pallens とする説もある。また、別種とすべきだという考えもある。
分布 本州、四国、九州。外国では、朝鮮半島。
生態・形態 冷温帯〜暖温帯の落葉広葉樹林に生える。菌寄生植物で、まったく葉緑素を待たない。
オニノヤガラより、花茎は短く、花数は少ない。 オニノヤガラの花数が20〜50個であるのに対して、シロテンマは5〜10個、多くても20個以内である。
花は白色で、やや緑色を帯びることもある。
花期 6〜7月。オニノヤガラより、やや遅い。

参考書: 日本のラン ハンドブック @ 低地・低山編


2013/7/21

花茎の高さ24cm、直径2.5mm。花数は8個。
オニノヤガラと比べると小さくて、ヒメテンマと呼ぶにふさわしい。

花の色は純白。大きさは計測していないが、オニノヤガラと大きくは違わないと思う。しかし、花茎が細い(オニノヤガラの半分程度)ので相対的に大きく見える。


2013/7/14

1週間前の蕾の状態


2015/8/2

果実期

オニノヤガラの品種? 変種? それとも別種?

 シロテンマは オニノヤガラ の品種とする説が大勢ですが、これに対して別種とすべきだという主張もあります。

 シロテンマは、1939年にオニノヤガラの変種 Gastrodia elata var. pallens Kitag. として発表されました。
 ところが、1956年に津山尚氏が「日本産オニノヤガラ属雑記(2)」の項目「アオテンマ及びシロテンマについて」の中で、 「小生はアオテンマと同様に品種級の学名を与える方がよいと思う」として Gastrodia elata Bl. forma pallens (Kitagawa) Tuyama と命名しました。
 あえて品種とした理由はまったく記載されていません。それだけではなく、前の文に続いて「シロテンマはアオテンマと異なって、全体に小形貧弱で花数も少ないものが多い」と書いています。 左:ヒメテンマ、右:オニノヤガラ 左:ヒメテンマ、右:オニノヤガラ これは「オニノヤガラの単なる花の色違いではない」ということですから、品種とする結論とは矛盾します。

 「オニノヤガラの中には、ときに全体が緑色になるアオテンマ forma viridis Makino や、 茎が短く、花とともに淡黄色のシロテンマ forma pallens Tuyama とよばれるものがある(日本の野生植物T)」とする通説は津山氏の論文を踏襲したものでしょうが、 今では、ほとんどの図鑑や植物誌、ホームページなどで採用されています。
 しかし、津山氏の品種説は、私の理解力不足のためか腑に落ちませんので、もとの変種説をとった次第です。

大きさや花数は、どれだけ違うか?

 津山氏が「全体が小形貧弱で花数も少ないものが多い」といいながら変種を否定して品種とした理由は、その違いが変種とするほど顕著ではない、と考えたからでしょう。
 ここに載せた写真のシロテンマとオニノヤガラと比較してみました。
 シロテンマは、茎の高さ25cm、茎の直径2.5mm、花の数8個です。
 これに対してオニノヤガラは、茎の高さおよそ80cm(正確に計測していない)、花数は約35個です。 また、日本の植物Tには、オニノヤガラは茎の高さ40〜100cmで、20〜50花をつけると記載されています。

唇弁の切れ込みの違い

 オニノヤガラは唇弁の中央前部が細かく深く裂けて、紐状になていますが、 左:ヒメテンマ、右:オニノヤガラ 左:ヒメテンマ、右:オニノヤガラ シロテンマのほうは切れ込みは浅く細かい刻みがある程度です。
 この特徴がオニノヤガラまたはシロテンマに共通するものなのかどうかは、まだ定かではありません。 もっともっと多くの観察結果を集約して結論を出す必要がありそうです。

日本ラン科植物図譜 のオニノヤガラのページに3つの産地(秋田県、長崎県、北海道)の唇弁のイラストが載っていますが、三者三様で形が大きく異なります。 唇弁前部の切れ込みも、オニノヤガラ(写真右)に近いものもあれば、シロテンマ(写真左)に似たものもあります。 しかし残念ながら、これら3つがすべて狭義のオニノヤガラなのか、シロテンマも含まれているのかは書かれていません。

2013/8/18

シロテンマとヒメテンマとは同じもの?

 シロテンマの別名としてヒメテンマという和名がありますが、 これは牧野富太郎博士が命名したものです。
 明治35年(1907年)に、シロテンマの標本に Gastrodia gracillis の学名をあて、 新たにヒメテンマの和名をつけて、シロテンマと並記したそうです。
 種小名 gracillis は「優美な」「ほっそりした」という意味の形容詞です。 博士はヒメテンマが和名としてシロテンマよりふさわしいと考えたのではないかと、 私は想像します。

 ところが Gastrodia gracillis はシロテンマとは全く別物であることを 1952年に津山尚氏が「日本産オニノヤガラ属雑記(1)」の中で明らかにしました。 そして Gastrodia gracillis には和名ナヨテンマを与えました。 博士の誤った同定が正されるまでに半世紀近く経過していますが、 ナヨテンマがそれだけ珍しく実物を目にする機会が少なかったからでしょうか。

 もし博士がこの誤りに早く気づいていたなら、シロテンマ(ヒメテンマ)に新学名をつけて発表していたでしょう。 それはオニノヤガラの品種や変種ではなく、新種としての学名だったに違いないと思います。
 なぜなら、博士はオニノヤガラより小形で花数も少ない点に留意し、 この違いを大きく見ていた(これがナヨテンマと混同する遠因ともなった)と思われるからです。

 シロテンマといっても、高さ25cmほどの小形で花数10個足らずのものから 大きさも花数も普通のオニノヤガラとかわらないようなものまであるようです。 前者はヒメテンマの和名がふさわしいでしょう。 後者はシロテンマあるいはオニノヤガラの白花品種と呼ぶのが適当であるかもしれません。
 参照⇒ホームページ「上州花狂いの植物散歩」シロテンマのページ

2013/8/18

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