和名 コオロギラン 蟋蟀蘭 花の色形からコオロギを連想したもの。
学名 Stigmatodactylus sikokianus Maxim. ex Makino  種小名 sikokianus は、牧野博士が四国の高知県横倉山で発見したことによる。
分布 本州(紀伊半島)、四国(高知、徳島)、九州(宮崎、鹿児島)、伊豆諸島。外国では、中国東南部、台湾。
 ▼ もっとみる  高知県の自生地は、20年ほど前には、横倉山だけだと言われていたが、 2009年発行の高知県植物誌では、5カ所記載されている。
 その後も何か所か発見されているようだ。

生態と形態 スギ林や常緑広葉樹林に生える。四国では、ほとんどの自生地がスギ林で、降り積もったスギの落ち葉の中にでる。
地下に小さな球根があり、そこから枝を出して先に新球ができる。 花期の高さは5〜10cm(草丈の大半は、落ち葉に隠れて、地表に現れない)で、基部に鱗片葉1枚、中ほどに小さな葉1枚をつける。
茎の上部に1〜3(まれに4)個の花をつける。 苞葉は茎の中ほどにつく普通葉とほぼ同じ大きさである。 花は下から上へ次々と咲くが、2つの花が同時に咲くことはまれである。
 ▼ もっとみる  なお、コオロギランは、菌に寄生して十分な養分を蓄えた後に、花を咲かせ結実するために地上に茎を伸ばす。 だから、花期に見られる株はすべて必ず蕾を付けている。
 逆に言えば、地上に茎葉を伸ばしても、そのために消費する養分を光合成で得る養分で回収できない。 葉緑素は持っていても菌に依存する度合いが非常に強い、と考えられる。

花期 8〜9月。四国では8中旬〜9月中旬。
参考文献・サイト コオロギランの菌根菌の分離および同定

参考書: 日本のラン ハンドブック @ 低地・低山編、 カラー版 野生ラン(家の光協会出版)


2010/9/10




 この杉林には毎年たくさんのコオロギランが花を咲かすが、もとは水田だった所で近くには一軒の廃屋もある。
 牧野富太郎博士がコオロギランを発見した横倉山が高知県では唯一の自生地だ、と長い間いわれていた。 最近次々と新しい場所が見つかったが、その多くはこのような杉の植林である。

2010/9/10 2012/9/2 2006/9/5

8/9 8/9 8/28

杉の落ち葉の間から、姿を現したばかりの姿


2006/10/11

果実期

2004/10/1 (果実)

2004/12/2 (タネを飛ばした後の殻)


コオロギランの暮らしを見る

最初から見る

小さなコオロギランを大きくしてみると・・・

@ 全体像 小さな葉が1枚だけで、光合成の能力は弱い。花は1〜4個で、下から上へと順に開花。最初の花がしぼみ、2番目が開花中。3番目は2番目がしぼむ頃に開らく。 A 花を正面から見る。 唇弁は円形で、直径4mm程度。前半分の縁には細かい鋸歯がある。 B 唇弁の付属体と蕊柱のクローズアップ
(イラストは牧野博士作図の一部)
唇弁の基部の付属体は、上下2枚に分かれ、さらにそれぞれが左右に裂けている。
柱頭のすぐ下に細い突起がある。蕊柱の中ほどにも二股の突起がある。
C 花を横から見る。 蕊柱にある2つの突起や側萼片が確認できる。 D 花を下から見る。2つの側萼片が確認できる。 2つの側萼片がはっきりと判る。

 全体の長さは、10cmほどですが、半分あるいはそれ以上が落ち葉に隠れています。

 (=普通葉)は1枚だけで、長さ3〜5mm。
 (=苞葉)もほぼ同じ大きさです。

 葉の大きさや数から推測して、光合成の能力は非常に弱いと思われます。

 は1〜4個で、下から上へと順に開花しますが、同時に2つ開花することはほとんどありません。

 写真@の場合、最初の花がしぼみ、2番目が開花しています。3番目は2番目がしぼむ頃に開きます。一番上の蕾はひじょうに小さく、開花せずに終わる可能性もあります。

 萼片は細長い披針形です。側萼片は唇弁の裏側にあって、正面からは唇弁に隠れて見えません。
 花弁(=側花弁)も背萼片とほぼ同じ形、大きさです。

 唇弁は円形で、直径4mm程度。前半分の縁には細かい鋸歯があります。
 唇弁の基部には付属体があります。これは上下2枚に分かれ、さらにそれぞれが左右に裂けています。

 蕊柱は長さ3.5mm程度です。柱頭のすぐ下に細い突起があります。ひじょうに細いが、写真Cではどうにか確認できます。
 蕊柱の中ほどにも二股の突起がありますが、このほうは写真でもよく判ります。

 写真Cは、横から撮ったもので、側萼片や蕊柱の突起が確認できます。

 写真Dは、下から見上げるように撮ったものです。2つの側萼片が唇弁の裏側にあるのが確認できます。

2013/9/8

自生地は常緑広葉樹林?

 「常緑広葉樹林の林床に生える」と、手許の「野生ラン」(家の光協会発行)には書かれています。 ところが自生の様子を写した写真の説明には、「スギの落葉の中からポツポツと顔を出す」と説明があります。 常緑広葉樹林にスギが生えていてもいいし、スギ林に常緑広葉樹が混ざっていることも良くあることです。 しかし、コオロギランの自生環境の記述としては納得がいきません。
 私の見た自生地5箇所のうち4箇所はスギの植林で、スギ以外の木は1本もないと言っても良い状態でした。  横倉山 (高知県) は自然林らしく、スギのほかに低木の常緑広葉樹も相当な密度で生えています。当然、広葉樹の落葉もあります。
 しかし、コオロギランは広葉樹の落葉は避けて、スギの落葉の間から茎を伸ばしていました。 常緑広葉樹林内には生えない、といったら語弊がありますが、 コオロギランはスギの落葉の中に生える、と断言しても良いと思うのですが、どうでしょうか。

2006/10/23

コオロギラン、杉林でないところにもある!・・・今年の大発見

コオロギランは、命名者である牧野博士ゆかりの横倉山が唯一の自生地だ、と一昔前は言われていました。
常緑広葉樹林。雨で暗かった。 常緑広葉樹林。雨で暗かった。 小さなコオロギランの周りは、広葉樹の広い葉っぱばかり。杉の落ち葉は、まったくない 小さなコオロギランの周りは、広葉樹の広い葉っぱばかり。杉の落ち葉は、まったくない。
今では、私がしっているだけでも、5箇所はあります。
 それは、杉林です。水田や畑であったところに杉を植林したところも、2・3箇所あります。ですから、コオロギランは杉林にのみ生える。少なくても、杉の落ち葉が積もっている場所に生える。そう思い込んでいました。
 ことろが、今年の9月、土佐植物研究会の例会で案内してもらった、コオロギランの自生地は、私の「常識」を覆すもので、今年一番の大事件でした。
 「ここでは周辺には全くスギは無く、ほとんどがウラジロガシ,シロダモ,アカガシ,ヤブニッケイ,ハイノキ,アセビ,シキミ,ヒサカキなどの常緑広葉樹である.」( 土佐植物研究会のニュースレター
 この自生地は、あまり広くはなく、コオロギランの株数も少ないようです。 しかし、これからは「杉の落ち葉がないないところにもある」という観点から探してみたら、存外あるかも知れません。

2012/10/23

見つけた!

 9月5日、足元の杉の落葉の中に1本のコオロギランを

見付けました。 ここらの杉林にはコオロギランがあってもおかしくない、と探して登りましたが、成果なし。 弁当を食べて、ほぼ諦めながらの下り道でのことでした。
 道の両側は、4・50年もたった、よく手入れのできた杉の植林です。 人々はこの里からまちへでるとき、先祖から受け継いできた田や畑や里山に杉を植えたのです。
 この杉林をコオロギランは住処とし、たくさんの花を咲かせていたのでした。 自生地の発見は私を有頂天にしたのですが、すぐ近くの廃屋にはこの喜びを伝える人はいません。

2006/11/13

追記:
 ここにコオロギランがありそうだ、と見当をつけたのには訳があります。 2日ほど前に、横倉山のほかに新しい自生地が発見されたと、案内されましたが、 そこは40年前は水田か畑だったと推測できる場所でした。
 このような杉の植林なら、身近なところにいくらでもあると思って探し始め、 この年、三箇所の自生地に行き当たりました。

2012/2/4

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